とあるライブ会場で、一人の少女が歌っていた。オーディエンスはその歌に聞き入っている。ライブは始まったばかりで、会場をヒートアップさせるべくアップテンポのキャッチーな曲で、オーディエンスも体を弾ませている。
 少女は歌詞をすべて歌い切り、アウトロが奏でられている。しかし少女はアウトロが終わるのを待たずして、マイクを持ち直した。
「今日はみんな、集まってくれてありがとう!」
 観客が歓声を上げる。
「このZEPP与那国島で、わたしたち『BLOODY MARY』の42731回めのライブを飾ることができて嬉しいです」
 少女が観客の手の振るのに答えて、手を振り返す。
「じゃ、まずはメンバー紹介するね! ドラムス、御手洗さん!」
 少女の背後に陣取っていたスキンヘッドにピンクのハの字ヒゲの男が、スティックでタムやシンバルを叩きまくる。グラサンが揺れるのもお構いなしだ。
「次はギター、ボン・ジョン・ボジ!」
 面長の外国人が高速のオルタネイトでエレキギターを掻き鳴らす。長い足を振り回し自らも回転しながらライトアップされた舞台を右往左往する。
「そしてベースは、寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の……」
 名前を云い終える前にベースが重低音を轟かせる。少女の呆れた顔に寿限無(略)は微笑み返し、リフを奏でた。
「アーンド、カスタネットは与那小学校2年の田中くん!」
 舞台の片隅がライトアップされ、小さな子供がカスタネットを片手に「ン、チャ、ン、チャ」と口でリズムをとりながらカスタネットを叩いている。
「与那小学校は児童数が少なくて全6学年合わせて1クラスなので、田中くんは学校でたった1人の2年生です」
 静かな会場内にカスタネットの音がゆるゆると続いた。
「そして最後は……」
 少女がそう云うと、ドラムス・ギター・ベース、すべてのメンバーがそれぞれの楽器を思い思いに響かせる。田中くんは必死に「ンチャンチャンチャ!」と云いながらカスタネットを連打している。
「最後はわたし、メリーさん!!」
 会場がライトで真っ白に染まり、一瞬で照明が消されてブラックアウトした。



新釈 都市伝説「わたし、メリーさん」 完


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